柳ヶ瀬画廊

柳ヶ瀬画廊

創業大正8年
熊谷守一・香月泰男・藤田嗣治など
内外洋画巨匠作品取扱の老舗画廊

   

画廊ブログ「絵画のたのしみ」

2024.09.05

《ブログ》熊谷守一書籍を寄贈いたしました

柳ケ瀬画廊では「常設展」を開催中です。
熊谷守一、三岸節子、篠田桃紅、加藤東一など、
近現代の油彩画・日本画・書・彫刻を15点ほどを展覧中です。

さて、本日は弊社のある柳ケ瀬商店街についてのブログです。

今月にはいってから、商店街に新しいお店がリニューアルオープンしました。
7月に惜しまれつつ閉店してしまった岐阜高島屋さんにあった人気の「無印良品さん」と「恵那川上屋さん」の合同のお店です。初日から行列ができていて、賑やかな柳ケ瀬が戻ってきて嬉しいばかりです。

新しいお店には1階と2階に図書コーナーもできていました。
リニューアル工事中、商店街を通じて無印良品さんから書籍の提供依頼があり、商店街の皆さんが提供した本が並んでいるそうです。柳ケ瀬画廊も寄贈という形で熊谷守一書籍を4冊お渡しいたしました。書籍は店頭で読むこともできるそうです。よろしければぜひお手に取ってみてくださいませ。

寄贈した書籍は、
熊谷作品の図版多数の『柳ケ瀬画廊の百年 熊谷芸術と資料』、
熊谷とまちづくりの対談掲載号の『芸術新潮』2冊、
お子さんも楽しめる熊谷の絵本『はじまるよ』
の合計4冊です。

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2024.09.01

《ブログ》生誕130年記念 北川民次展(名古屋市美術館)

柳ケ瀬画廊では「常設展」を開催中です。
熊谷守一、三岸節子、加藤東一などの多彩な作品15点ほどを展覧中です。
ぜひお出かけくださいませ。

さて、本日のブログは美術館のお話です。
先日名古屋市美術館で開催中の北川民次展に出かけてまいりました。
北川民次は、愛知県の瀬戸・尾張旭市にゆかりがある縁で、東海地域で研究が盛んな洋画家です。今回は生誕130年にちなみ、節目の大規模展が開かれていました。


会場の名古屋市美術館は、緑豊かな白川公園内にある美術館です。
公園内には野外彫刻がたくさん置かれていて、美術館の入口ではいつもアレクサンダー・カルダーの「ファブニールドラゴン」が出迎えてくれます。カルダーは「モビール」と呼ばれる風で動く彫刻を手掛けるアーティストで、この作品も風を受けていつも気持ちよさそうに動いています。

開催中の北川民次展は約180点もの作品・資料が見られる充実の内容でした。
美術館の1階・2階・地下に作品が展示されています。

少し作家の紹介をしますと、民次は1894年に静岡の製茶業も営む地主の家の8人兄弟の末っ子として生まれました。
日本文学や哲学が好きな子供だったそうで、早稲田大学予科に進学しますが、美術に興味がわいたので中退して油彩画を描きはじめたそうです。その後、民次のお兄さんがアメリカのオレゴン州にいた縁で、20歳(1914年)に兄を頼って渡米しています。

民次はアメリカのアートスクールで美術の基礎を学んだのち、27歳(1921年)には当時美術運動が盛んだったメキシコに渡ります。展示室を見ていくと、その頃の代表作「トラルパム霊園のお祭り」(1930年)が飾ってありました。教会と墓地、赤子と葬列という対比が、民次らしい独特の遠近法で描かれた大作です。
また、この頃の民次はセザンヌなどに影響されて水浴の絵もよく描いていて、その作品も展示されていました。

42歳(1936年)になると、勤めていたメキシコのタスコ野外美術学校が閉校することもあって妻子を伴い帰国します。民次の奥様は東京の聖路加病院で働く看護師でしたが、スペイン公使に家庭教師として雇用されてメキシコで暮らしていたときに民次と結婚して、メキシコ滞在中に長女を、帰国後に長男をもうけています。そのため、メキシコ時代からは家族の作品が少しずつ登場してきます。

また、個人的にはあまりイメージがなかったのですが、民次は戦争や社会問題に対する批判をこめた作品を何点も制作していて、本展でもそうした時代を見つめる画家の視線が分かるような、民次の人柄が分かるような作品が何点も見られました。民衆の辛苦を描いた「雑草の如く」シリーズなども展示されています。

帰国後の民次は43歳(1937年)から東京の豊島区で暮らしました。
当時、熊谷守一をはじめ、多くの芸術家が暮らした「池袋モンパルナス」のエリアです。当時同地で暮らしていて、弊社が代々取り扱っている熊谷守一とも交流があったといわれています。
この展示室ではこの時代の豊島近郊を描いた風景画も飾られていました。メキシコで盛んだった壁画の影響を受けた、遠近法が強調された独特のかたちが面白い作品群です。

さらに展示を見ていくと、戦時中に疎開していた瀬戸の風景が登場します。

戦況の悪化に伴い、民次は49歳(1943年)11月に妻の実家のあった瀬戸に疎開しました。
また、74歳(1968年)には愛知県の東春日井(現在の尾張旭市)にも転居していて、愛知県で後半生を過ごして、制作だけでなく児童のための絵本製作や絵画教室などもひらきました。

今回は民次が心を寄せた瀬戸の風景が何点も展示されています。
また、絵本『マハウノツボ セトモノノオハナシ』の原画なども展示されていて、複写されたサンプルで絵本の内容を読むこともできるようになっていました。絵本作家としての民次が瀬戸に寄せたまなざしが感じられるあたたかな内容の絵本です。

民次は95歳(1988年)に瀬戸市陶生病院で亡くなりますが、その前に、84歳(1978年)には絵筆を置いています。展覧会では恐らく最後の自画像ではないかと言われている作品「バッタと自画像」が展示されていました。
晩年に繰り返し自画像として描いたバッタが、民次の肖像とともに画面いっぱいに描かれた作品です。

地下の展示室には、主に民次が手がけた壁画の資料も展示されていました。
壁画運動の盛んだったメキシコにいた民次はずっと壁画を作りたいと思っていたそうで、帰国後にやっと手掛けるチャンスをつかみます。職人の方を大事にして、一緒に手掛けていたそうです。
名古屋のCBC会館の壁画「芸術と平和」では、岐阜の矢橋大理石商店さんと一緒に、制作指導者として矢橋六郎を迎えて制作していたと紹介されていました。矢橋さんの壁画の仕事は岐阜県内でも現在の県庁の展望室などで見ることができますね(^^)

また、2020年にビルの建て替えてで移設された壁画「TOMATO」の原画と資料もみられました。
「TOMATO」は名古屋の旧カゴメビルに設置されていた壁画で、ビルの建て替えに伴い、現在は常滑のINAXライブミュージアムに寄贈されています。原画はいまもカゴメ株式会社さんが所蔵していて、そちらも展示されていました。制作の様子が分かる雑誌も置かれていて、カゴメ側の注文はトマトを入れてくれという程度で、あとは民次が自由に楽しく構図を考えていたと書かれていました。
今はこうした壁画が少しずつ見られなくなっているので、こういう機会に民次の壁画が一気に見られるのはとても嬉しいですね。

 

北川民次展のチケットを提示すると地下の常設展示室も鑑賞できます。
海外作品や現代アート、メキシコの作品などとあわせて、三岸好太郎の「海と斜光」などの草土社関係の作品も見られました。

名古屋市美術館の民次展は9月8日までの開催です。
同時開催で瀬戸市美術館や瀬戸信用金庫アートギャラリーでも民次展がひらかれているので合わせてお出かけになっても楽しそうです。

また、柳ケ瀬画廊でも9月20日からはじまる「秋の秀作鑑賞展」に民次の油彩画2点を展覧予定です。バッタと花瓶の花を展示予定です。こちらもぜひお出かけくださいませ。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2024.08.31

《ブログ》柳ケ瀬商店街に新しいお店がオープンします

柳ケ瀬画廊では秋の常設展を開催中です。
熊谷守一、三岸節子、日比野克彦の作品のほか、
若手日本画家、版画家などを幅広く15点ほど展覧中です。
ぜひお出かけくださいませ。

さて、明日9月1日に柳ケ瀬商店街にリニューアルオープンするお店があります。

岐阜髙島屋さんの閉店とともに改装工事に入っていた無印良品さんと恵那川上屋さんです。
「無印良品 柳ケ瀬」「恵那川上屋 栗市栗座 柳ケ瀬店」としてリニューアルオープンするそうです。いつも人気だったふたつのお店が装いを新たに賑わうことが楽しみですね。

1階と2階には図書コーナーもできるということで、柳ケ瀬画廊も熊谷守一先生の図書を寄贈いたしました。どんなコーナーになるのか弊社もわくわくしています。

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2024.08.30

《ブログ》市内で文学講座が開かれます

柳ケ瀬画廊では初秋の常設展を開催しています。
熊谷守一作品を中心に、近現代美術15点を展覧中です。

さて、今日は今週末から岐阜市内で開かれる文学講座のご紹介です。
メディアコスモスで岐阜ゆかりの文学作品の講座が開かれ、窓口になっている岐阜市立中央図書館(https://g-mediacosmos.jp/lib/information/2024/08/post-1100.html)のカウンターかお電話で先着順で申込の上、受講できるそうです。

取り上げられる作品は下記3点です。
いずれも岐阜の地名がたくさん登場する小説ですね。

森田草平『煤煙』
水上勉『その橋まで』
川端康成『篝火』

第1回の9月2日の回では『煤煙』が取り上げられるそうです。
要吉が昔の岐阜駅に到着する下記の冒頭のシーンが印象的な作品です。

” 日が落ちて、空模様の怪しくなった頃である。東海道線の下り列車は、途中で故障を生じたので、一時間余りも後れて岐阜駅へ着いた。車掌がぎふ、ぎふ」と呼びながら、一つずつ車両の戸を開けて行く。その後から、乗客は零れるようにプラットホームへ降りて、先を争って、線路の上に架けた橋を渡ろうとした。”

当時の文学者は画家ともゆかりが深く、この『煤煙』も装丁を洋画家の中川一政が手掛けています。
森田草平と中川一政は友人同士だったようです。性格がかなり異なるように感じられますが、どこか気の合うところがあったのでしょうね。
柳ケ瀬画廊が専門に扱っている熊谷守一も、志賀直哉作品をはじめ、様々な小説の装丁・挿絵を手掛けたり、文学者との座談会に参加したりしていて、当時の資料を読んでいると当時の文壇と画壇の距離感が感じられます。武者小路実篤などの文学者が熊谷守一作品を批評する文章などもあり、ちょっと変わった視点にくすっとくることもあります。

柳ケ瀬画廊の「秋の秀作鑑賞展」ではそうした熊谷守一や中川一政の作品も展示予定です。
「美術の秋」「読書の秋」をあわせてお楽しみいただけましたら嬉しいです。

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2024.08.29

秋の常設展(熊谷守一を中心に近現代絵画)(8/29~9/19)

夏季休廊が明け、本日から通常営業に戻りました。
本日から近現代絵画による常設展を開催しています。

(展示作家一覧)
熊谷守一 、三岸節子 、加藤東一
日比野克彦、鈴木敦子 、傍島幹司
田村幸帆 、山中現
ほか

皆さまのお越しをお待ちしております。
ぜひお出かけくださいませ。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

 

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