2025.11.07
《作品紹介》熊谷守一 墨彩画 種を蒔く人
柳ケ瀬画廊では「文化の日 熊谷守一展」を開催しています。
画廊に「たねまき」という題名の墨彩画を飾りました。
赤子を背負った女性が大地に種を蒔く構図の作品です。
赤子のおくるみには赤橙が使われていて、瑞々しい生命が色彩でも表現されています。
熊谷先生は子供、なかでも赤子が好きだったそうです。
生涯の友であった音楽家・信時潔氏がエッセイのなかで、熊谷さんの好きなものとして「子供、わけて生れたての赤ン坊、極早春の山の木の芽、馬、野草野鳥、金物では鉄、銀、機械類、刀、焚火、仕事では鍛冶屋、食物では米の飯、バタ、燻製類わけて鰊のそれ。それから画といいたいが大概の画よりは素地のカンバスが好きらしい」と書いています。様々な好きなものが羅列されるなか、最初にあげられるくらいなのでよほどお好きだったのでしょうね。
熊谷作品に登場する赤子は皆、赤系統の着色がされています。
産まれたばかりの真っ赤な肌色を表したかったのでしょうか。
油彩画や墨彩画で何枚も描き、娘の榧さんがご出産されたときも母子の油彩画を描くなどしています。
作品は画廊にて展示しています。
お時間ございましたらぜひお出かけいただきご覧くださいませ。
皆様の御清鑑を心よりお待ちしております。
柳ケ瀬画廊 市川瑛子
2025.11.06
《ブログ》国立博物館のクラウドファンディング
柳ケ瀬画廊では「文化の日 熊谷守一展」を開催しています。
美術のニュースを見ておりましたら、先月頭に始まった東京国立博物館のクラウドファンディングがわずか一ヶ月ほどで目標額3000万円に到達したと報道されていました。
古いお屋敷で見つかった源氏物語の屏風の修復のためのクラウドファンディングです。
該当の作品は六曲一双と呼ばれる形式の屏風で、「六曲」は六面が蝶番で屏風に仕立てられているという意味で、「一双」は二枚(二隻)の屏風が対となって存在する作品という意味です。
そのため、普段は折って立てられる屏風を床に寝かせて広げると、今回の作品も7mほどの長さになり、また江戸時代に制作された作品のため修復にも最新の注意が必要ということで、3000万円という修復費用を要するようです。
描いたのは江戸時代の土佐派の絵師ですが、土佐派は室町時代からの歴史のある一派ですので、作品も重厚な歴史の重なりを持つような、金泥で描かれた雲で場面が展開していく優美な仕上がりになっています。
クラウドファンディングは2ヶ月ほどの予定ですので、期間半ばで達成だなんて嬉しいですね。
美術を愛する方たちがたくさんいらっしゃるのだなと、胸があたたかくなります。
このクラウドファンディングは12月19日までの開催で、引き続きさらなる寄付も受け付けています。
寄付額にあわせて特別な返礼品やイベント参加権なども設けられていますので、ご興味ございましたら特設サイト(https://readyfor.jp/projects/tohaku2025)をご覧になってみてはいかがでしょうか。
また、柳ケ瀬画廊でも熊谷守一展を11月24日まで開催しています。
毎年、その折々に手に入った作品を展示しておりますので、毎年、そのとき限りの展示となっています。
こちらもぜひご覧にお出かけくださいませ。
皆様の御清鑑を心よりお待ちしております。
柳ケ瀬画廊 市川瑛子
2025.11.01
《作品紹介》熊谷守一 墨彩画 ぼたん
柳ケ瀬画廊では「文化の日 熊谷守一展」を開催中です。
毎秋恒例の熊谷展、今年は墨の名品が多数揃いました。
画廊の正面には牡丹の墨彩画を飾っています。
赤色、黄色、黄緑色、緑色、そして墨の黒色……様々な色彩が使われていて華やかな作品です。
大きさも15号大ですので力強い迫力もたのしめます。
牡丹という花は、熊谷先生が好み、繰り返し描いたモチーフです。
1932年から亡くなるまでの45年間を過ごした自宅の庭にも植えられていたそうで、熊谷先生のエッセイによると毎年花を咲かせていたといいます。熊谷作品には赤牡丹、白牡丹、黄牡丹など様々な花弁の色の牡丹が登場しますので、植物の手入れを好んだ熊谷先生が色々な品種を育てていたのかもしれませんね。
そう思うと作品の向こう側に牡丹を愛でる熊谷先生の姿がみえるようです。
柳ケ瀬画廊の熊谷守一展は11月24日までの開催です。
お時間ございましたらぜひお出かけくださいませ。
皆様の御清鑑を心よりお待ちしております。
柳ケ瀬画廊 市川瑛子