2024.09.22
《ブログ》ジュアン・ミロの表記について
柳ケ瀬画廊では「秋の秀作鑑賞展」を開催中です。
近現代の油彩画を中心に、
熊谷守一、三岸節子、北川民次、
東郷青児、ミロ(銅版画)などを展覧しています。
少し暑さが落ち着いたこともあり、
初日から多くのお客様にお出かけいただけて嬉しいです。
来月20日までの長めの会期です。ぜひお出かけくださいませ。
さて、本日は昨日のブログでも触れたジュアン・ミロについての続けてのお話です。
昨日のブログの冒頭でも書きましたが、この画家については「ホワン・ミロ」「ジョアン・ミロ」「ジュアン・ミロ」という3つの読み方が主にされています。往年の美術ファンの方のなかには「ジョアン・ミロ」の呼び名がしっくりくるという方もいらっしゃるかもしれません。
最初の「ホワン・ミロ」の名前は、スペインのカスティーリャ地方での呼び方です。
カスティーリャは、一説にはカステラの語源になったともいわれる地域名ですね。
ミロ自身はスペインのバルセロナ生まれですので、地域としてはカタルーニャ地方の出身にあたりますが、ミロが活躍した1936年から1975年にかけてのスペインはフランコ体制のもとにあり、カスティーリャ地域以外のスペインの言葉が禁じられていたのでこの名が使われました。
その後、英語の読み方の「ジョアン・ミロ」が主流になります。
世界的に活躍していたミロは生前もアメリカやヨーロッパ各地をまわり、日本にも二度訪れています。二度目の来日のときには大阪万博で「無垢の笑い」という作品を制作・発表しました。この作品はいまも大阪の国立国際美術館で常に常設展示されています。
そして、このジョアン・ミロの呼び名は長く使われ、「ジョアン・ミロ展」が各所で開催され、「ジョアン・ミロ画集」なども多く発行されてきました。なので、もしかしたら日本で最も知られている呼び方はこのジョアンかもしれません。
ただ、近年アーティストについて、世界的に出身地での呼び方を大切にしようという考えが広がっておりまして、ミロもその流れで出身のスペインのカタルーニャ地方の呼び方「ジュアン・ミロ」に変わりつつあります。
一昨年、愛知県美術館さんで開かれたミロ展でも、このジュアン・ミロが用いられました。
私もそのときに「あれ、誤植かな?どうしてかな?」と調べて呼び方の変化を知りました。
作家の呼び方ひとつにも色々な意味があって面白いですね。
ミロ作品を含めた17作品を展示する「秋の秀作鑑賞展」は10月20日までの開催です。
お時間ございましたらぜひお出かけくださいませ。
柳ケ瀬画廊 市川瑛子