柳ヶ瀬画廊

柳ヶ瀬画廊

創業大正8年
熊谷守一・香月泰男・藤田嗣治など
内外洋画巨匠作品取扱の老舗画廊

ブログ

2024.03.18

《ブログ》岐阜と松本竣介、麻生三郎、舟越保武

新聞を読んでおりましたら、VR体験の記事が取り上げられていました。
岐阜県御嵩町が町のPRのために、宿場町や廃坑跡を動画にしたものです。

一時は御嵩町の町面積の15%を占めていたという廃坑跡では、当時、燃料資源として使われていた亜炭の採掘がおこなわれていました。
全国的に見ても一大産地だったこともあり、全国亜炭従業員労働組合の本部も置かれていたそうです。

そこで、1947年に松本竣介と麻生三郎の展覧会が開かれました。
当時、現地では景気もよく、英語の学習が行われていたほどモダンな空気もあったようで、親類のつてで東京にいた彼らに展覧会の依頼があったそうです。展覧会名は松本竣介と麻生三郎ですが、友人の舟越保武の作品も展示されたといいます。

松本竣介はこの展示の翌年の1948年には亡くなってしまっていますし、この頃は戦中に埋めていたという赤褐色の絵具を使った独特の質感のカラーの油彩画を描いていたので重要な作品群だったと思います。

麻生三郎は空襲でアトリエを失い、この展示の翌年にようやく世田谷にアトリエを構えて、1950年代の名作を多く描く環境を固めました。そのなかで選び出品された作品は戦災から逃れた貴重な作品が見られたと思います。
いま、麻生三郎の1950年代の油彩画を画廊でも飾っていますが、花と静物のある空間の質量を存在感たっぷりに描きあげていて、魅力を感じます。

この作家の展覧会が戦後すぐの岐阜で開かれたなんて、不思議な縁を感じますね。
実際に本人たちも展覧会場に来ていたと聞いたこともありますが、日記などに当時の様子が綴られていないかなと気になっていて、いつか調べてみたいなと思っています。

 

いまは松本竣介作品は飾っておりませんが、麻生三郎作品はしばらく展示の予定です。
よろしければぜひご覧にお出かけくださいませ。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

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