2022.12.02
《ブログ》メナード美術館「開館35周年企画展 35アーティスト vol.Ⅰ」
12月に入り、岐阜市内も一気に冬の寒さとなりました。
柳ケ瀬画廊では年内最後の展覧会「小品特選展」と、小さな特集「田村幸帆展示」を開催しています。
さて、先日、メナード美術館さん(愛知県小牧市)で開催中の、
「開館35周年企画展 35アーティスト vol.Ⅰ」展に出かけてまいりました。
メナード化粧品の野々川夫妻が蒐集したコレクションを展示した美術館です。
名品ばかりの美術館として知られ、国内外の質の高い作品が楽しめます。
今回の展覧会は「開館35周年記念展」ということで、
ゴッホ、セザンヌから岸田劉生、速水御舟、マグリット、リヒターまで、
近現代の多彩な絵画や彫刻の名品100点ほどを鑑賞できました。
今回の展覧会の見どころのひとつは、
メナード美術館さんが所蔵している熊谷守一作品がすべて飾られていることです。
その数、なんと油彩画26点!
最後の展示室の壁二面に熊谷作品が特集されていて、ファンにはたまらない展示になっていました。
若いころは寡作で、試行錯誤しながら作品を練って制作していた熊谷守一先生が「モリカズ様式」を確立し、堰を切ったように魅力のある作品を描き始めた1950年代から晩年1975年までの、人物、花、風景、動物の油彩画が揃っています。
二人の人物がダンスしているような《笛吹く児》から、
使い方の難しいビビットオレンジを大胆に使った《地蜘蛛》、
手のひらに乗るほどのミニチュアの作品《海》、
そして、猫、薔薇、牡丹、風景の蔵王、水の動きが楽しい《水口》まで、
熊谷先生の中期から晩年の画業の魅力が壁一面で楽しめる展示室になっていました。
また、面白いことに、《群鶏》というニワトリ(赤白帽をかぶったような愛らしい姿)の群れを描いた作品は、1959年制作のものと、1961年制作のものとがコレクションされており、同題名・同構図のふたつの作品を見比べられるようになっています。
片方の作品は、ニワトリの体の白色が薄く塗られていて、支持体の木材の茶色が透けて見えるように表現されているため、生まれたばかりの瑞々しいいのちのようだったり、光や水でキラキラとしているように感じられます。そして、もう片方の作品は、白色が濃く塗られていて、力強さや生命力を感じられます。
熊谷先生は「蟻は左の二番目の足から歩きはじめる」という有名な言葉があるように、対象をよく観察して描いていた画家なので、どうしてこのように表現したのだろうと考えることも楽しくなります。
そして、同題名・同構図の作品を2点コレクションされていた野々川夫妻は熊谷守一作品に興味津々で、よほどお気に入りの作家だったのかしら……などと、コレクションしていた方に思いを馳せることも、個人コレクションの美術館ならではで面白いと思います。
この展覧会は12月25日、クリスマスの日までの開催だそうです。
寒い冬に、あたたかな展示室で国内外の名品を楽しまれてはいかがでしょうか♬
***ご紹介した展覧会の詳細***
展覧会名:「開館35周年企画展 35アーティスト vol.Ⅰ」展
展覧会期:10月7日(金)から12月25日(日)まで
展覧会場:メナード美術館(愛知県小牧市)
メナード美術館さんの公式ウェブサイト
https://museum.menard.co.jp/
柳ケ瀬画廊 市川瑛子