柳ヶ瀬画廊

柳ヶ瀬画廊

創業大正8年
熊谷守一・香月泰男・藤田嗣治など
内外洋画巨匠作品取扱の老舗画廊

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2022.01.16

《作品紹介》黒田清輝 風景 油彩画

柳ケ瀬画廊「新春逸品展」を開催中です。

展示作品の中から、毎日1作品、お薦めの作品をご紹介しています。

いま、画廊では黒田清輝先生の油彩画を飾っています。
0号の小さな油彩画ですが、小品だからこそ細部まで描き込まれた出来のよい作品です。

黒田先生は1866年、島津家家臣の家に生まれ、最初は政府の文官として働くことを見据えてフランスに法律を学ぶために留学しました。しかし、留学先で知り合った山本芳翠先生らから絵の魅力を教えられ、次第に昼間は法律を学び、夜は美術を学ぶ生活に変わっていきます。そして、最終的には美術の道に専念することとなりました。(※ 山本芳翠先生は、岐阜出身で、重要文化財の油彩画「裸婦」のを描いた画家です。)

黒田先生がフランスで学んでいた画風は、印象派風の、例えば影の黒色を紫色などで描くような色彩の描き方でした。それはまだ日本には伝わっていない表現方法でしたので、帰国後、黒田先生の作品は驚きを持って迎えられ、旧来の美術に対して「新派」「紫派」と呼ばれることとなります。
また、黒田先生は画家としてだけでなく、日本という国の美術そのものの確立にも力をそそぎ、東京美術学校に新説されると西洋画科を率いていくこととなります。そこで西洋流の授業も取り入れたので、日本の油彩表現の基礎を変えていくことにもなりました。

ただ、多方面で活躍したことで、特に大正期にはいってからの黒田先生は政治家・教育家としての仕事に忙殺されていくこととなってしまいます。そして思うように制作時間が取れなくなった黒田先生が選んだ方法が、小品という表現サイズの選択でした。

今回展示している作品も、小品の油彩画です。
制作年代ははっきりしていませんが、黒田先生の弟子の白瀧幾之助先生が大正六年頃の作ではないかと書いていることと、画風や寸法からおそらく大正初期の作品と思われます。
黒田先生は自宅に美しい花々による庭園を拵えるなど、自然を愛した画家でした。そのため、作品も風景や花、空のモチーフが多く登場しています。本作も風景を描いた作品です。

作品は画廊の正面に展示してございます。
お時間ございましたらぜひ実作品をご覧にお出かけくださいませ。
皆様の御清鑑をお待ちしております。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

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