柳ヶ瀬画廊

柳ヶ瀬画廊

創業大正8年
熊谷守一・香月泰男・藤田嗣治など
内外洋画巨匠作品取扱の老舗画廊

ブログ「絵画のたのしみ」

2022.01.20

《作品紹介》難波田龍起 群像

柳ケ瀬画廊「新春逸品展」を開催中です。

展示作品の中から、毎日1作品、お薦めの作品をご紹介しています。

難波田龍起先生の作品2点が手にはいりました。油彩画とペン画の作品です。
新春逸品展では、そのうちペン画の《群像》を飾っています。

難波田龍起先生は、1905年に北海道で生まれ、翌年に東京に移って育ちました。早稲田在学中に高村光太郎先生と親しくなり、しばしば高村邸を訪れ、多くの芸術仲間との交際もはじめたそうです。なかでも松本竣介先生とはとても親しかったそうで、松本先生が若くして亡くなるまで二人の交際は続いていたといわれています。

初期から中期にかけては具象的な作品も描いていた難波田先生ですが、戦後になると抽象的、幾何学的な作品を描くようになります。そして、その形は次第に鋭く勢いのある線となり、ペインティングナイフでの表現やドロッピングなども併用するようになっていきました。

今回展示している作品は1985年に描かれた作品です。
80歳を迎え、画家として脂が乗り、郷里の北海道立近代美術館で展覧会がひらかれ、翌翌年には東京国立近代美術館で「今日の作家 難波田龍起展」が開催されたような時代にあたります。
タイトルこそ《群像》という具象的なイメージでつけられていますが、画面は、難波田先生らしい、鋭い線とまとまりで表現されています。黒一色のペン画ですが、よく難波田作品を語る時に用いられるように、不思議と色や音が感じられるような魅力が伝わってまいります。

柳ケ瀬画廊の「新春逸品展」も折り返しをすぎ、来週末までの開催となりました。
お時間ございましたらぜひお出かけくださいませ。
皆様の御清鑑を心よりお待ち申し上げております。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2022.01.17

《ブログ》荻須高徳先生のレゾネが刊行されました

求龍堂さんから、荻須高徳先生のレゾネが刊行されました。
生誕120年記念の決定版レゾネです。

荻須高徳先生の作品は、先生自身も暮らしたフランスの街並みが、どこか人々の気配を感じるような魅力で描かれています。散歩がお好きだったという荻須先生の足音や息遣いが聞こえてくるようです。
出身地である愛知県稲沢市には「荻須記念美術館」もございます。
昨年は生誕120年記念の展覧会が開かれ、多くのファンで賑わっていました。

今回のレゾネは、ご息女の荻須恵美子ハルペルン氏の監修です。
荻須恵美子ハルペルン氏は、荻須高徳作品の著作権継承者で、作品の鑑定期間「レザミ・ド・オギス」を運営されていらっしゃる方です。ご執筆された巻頭挨拶文からは、お父様の作品を大切にされている思いが伝わってまいりました。

1500点を掲載した『荻須高徳 カタログレゾネ』は、刊行元の求龍堂さんのウェブサイトをはじめ、各美術館などでお求めいただけるそうです。
求龍堂さんは多くの画集やレゾネを手がけた美術の出版社です。熊谷守一先生のレゾネも出していらっしゃいますが、色の再現度が高く、実作品の魅力が伝わるお仕事をされています。

レゾネですので少しお高い画集ですが、ファンの方は一冊御手元にいかがでしょうか(*^^*)

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求龍堂ウェブサイト 荻須高徳 カタログレゾネ 販売ページ
https://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/000000002042/

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柳ケ瀬画廊 市川瑛子

2022.01.16

《作品紹介》黒田清輝 風景 油彩画

柳ケ瀬画廊「新春逸品展」を開催中です。

展示作品の中から、毎日1作品、お薦めの作品をご紹介しています。

いま、画廊では黒田清輝先生の油彩画を飾っています。
0号の小さな油彩画ですが、小品だからこそ細部まで描き込まれた出来のよい作品です。

黒田先生は1866年、島津家家臣の家に生まれ、最初は政府の文官として働くことを見据えてフランスに法律を学ぶために留学しました。しかし、留学先で知り合った山本芳翠先生らから絵の魅力を教えられ、次第に昼間は法律を学び、夜は美術を学ぶ生活に変わっていきます。そして、最終的には美術の道に専念することとなりました。(※ 山本芳翠先生は、岐阜出身で、重要文化財の油彩画「裸婦」のを描いた画家です。)

黒田先生がフランスで学んでいた画風は、印象派風の、例えば影の黒色を紫色などで描くような色彩の描き方でした。それはまだ日本には伝わっていない表現方法でしたので、帰国後、黒田先生の作品は驚きを持って迎えられ、旧来の美術に対して「新派」「紫派」と呼ばれることとなります。
また、黒田先生は画家としてだけでなく、日本という国の美術そのものの確立にも力をそそぎ、東京美術学校に新説されると西洋画科を率いていくこととなります。そこで西洋流の授業も取り入れたので、日本の油彩表現の基礎を変えていくことにもなりました。

ただ、多方面で活躍したことで、特に大正期にはいってからの黒田先生は政治家・教育家としての仕事に忙殺されていくこととなってしまいます。そして思うように制作時間が取れなくなった黒田先生が選んだ方法が、小品という表現サイズの選択でした。

今回展示している作品も、小品の油彩画です。
制作年代ははっきりしていませんが、黒田先生の弟子の白瀧幾之助先生が大正六年頃の作ではないかと書いていることと、画風や寸法からおそらく大正初期の作品と思われます。
黒田先生は自宅に美しい花々による庭園を拵えるなど、自然を愛した画家でした。そのため、作品も風景や花、空のモチーフが多く登場しています。本作も風景を描いた作品です。

作品は画廊の正面に展示してございます。
お時間ございましたらぜひ実作品をご覧にお出かけくださいませ。
皆様の御清鑑をお待ちしております。

 

柳ケ瀬画廊 市川瑛子

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