2022.01.24
《作品紹介》須田国太郎 油彩画 花
柳ケ瀬画廊では新年恒例の「新春逸品展」を開催中です。
展示作品の中から、毎日1作家、お薦めの作品とともにご紹介しています。
画廊の入口に須田国太郎先生の花の油彩画を飾りました。
日本画壇に限らず世界の多くの国でフランス志向が強かった時代に、スペイン美術に注目し、また、京都に拠点を置いて日本における油彩画を画家として学者として追求しつづけた洋画家です。
須田先生は1891年に京都に生まれました。京都帝国大学(現在の京都大学)で哲学を専攻しながら、絵を描き、謡曲を学び、伝統的な文化のなかで成長していきます。なかでも美術にはとりわけ関心が強く、大学卒業後は関西美術学院に入り本格的に絵を学びはじめました。その後、28歳で渡欧すると、四年間の滞在期間にプラド美術館で模写をしたり、友人たちと欧州各地に写生旅行に出かけるなど、充実した日々を過ごします。
帰国後は母校の京都帝国大学などで美術史を講義して、主に学者・教師として活躍していましたが、友人の日本画家・神坂松濤先生の強いすすめで41歳のときに東京の資生堂画廊で初めての個展を開きます。すると、それを皮切りに独立展などの団体展での作品発表や個展の開催が続き、重厚な、けぶるような黒を基調とした作風で高い評価を受けるようになっていきました。
須田先生は著書のなかで制作にあたる気持ちを「ただ油絵具を与えられ、それでかくから油絵であるというだけなら単なる間に合わせである。画をかく材料は油絵具だけではない。〔中略〕日本油絵はどんな技法を見出してきたか。技法が先ずあって油絵をかいているのではなかろうか。〔中略〕それらは皆筆者の表現と一致するものであろうか。」と語っています。
日本的な油絵というと梅原龍三郎先生や岸田劉生先生が浮かびますが、おふたりが西洋からはじまり、次第に東洋的な要素を画面に入れていったことに対して、須田先生は最初から東洋の人として油絵具という素材に挑んでいった印象を受けます。そのため、黒という重苦しいと思われる色彩を用いていても、画面に暗さや影はなく、むしろ水墨画の余白の美のような、黒があってこそ光や形や色が見えてくる作品だなあと感じることがあります(*^^*)
今回展示している作品も、須田先生らしい黒の気配がありながら、可憐な花の姿が美しい作品です。
須田作品はあまり取り扱う機会がなく、久しぶりの展示になります。
ご興味ございましたら、ぜひご覧になってみてくださいませ。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。
柳ケ瀬画廊 市川瑛子